除草剤「グリホサート」抵抗性のオヒシバ防除法

埼玉県大里農林振興センター
丹野 和幸
埼玉県茶業研究所
小俣 良介*
*責任著者

はじめに

グリホサートは、水田のあぜ道や非農耕地の管理に生産者から一般家庭まで広く利用される除草剤である。しかし、近年グリホサートに抵抗性を示すオヒシバ(イネ科の一年生夏雑草)が生じ除草しきれないものが増えてきた(1, 2)(図1, 2)。本稿では、その効果的な防除法について紹介する。

  • 図1. 現地におけるグリホサート抵抗性オヒシバの発生状況
    (A) 加須市水路脇(2018/8/17)、(B) 本庄市水田畦畔(2018/12/4)。  
  • 図2. オヒシバの除草剤抵抗性の評価(引用文献1より、一部改変)
    現地で発生しているオヒシバは多剤抵抗性ではなく、グリホサートのみに抵抗性を持つと考えられる。

除草剤の分類

除草剤を使用する際は、有効成分の特性を知っておくことが重要である。除草剤は土壌処理剤と茎葉処理剤に分けられるが、前者は土壌表面に散布すると有効成分が滞留し、発芽した雑草を枯らすのに対して、後者はすでに生えている雑草に散布することにより有効成分が茎葉から吸収されて雑草を枯らす。茎葉処理剤には、薬液の付着部位のみを枯らす接触型と、全身を枯らす浸透移行型がある。また、殺草の範囲が狭い選択性剤と、農作物を含むほぼすべてを殺草する非選択性剤がある(図3)。
グリホサートを含む製剤が連用される理由は、「安価で浸透移行性のある非選択性茎葉処理剤」がほかに見あたらないからである。また、小規模な生産者だと、一度購入したら剤を使い切るのに数年かかり、結果的に同じ剤を連用することもある。

  • 図3. オヒシバに利用可能な水田畦畔用除草剤

抵抗性オヒシバの発生状況と被害

オヒシバは、生長点が地際に近い位置にあるという特徴をもつ。そのためグリホサート散布後に枯れ残ったオヒシバを草刈り機で除草をしてもすぐに再生し、水田のあぜ道を中心に問題となっている。オヒシバが繁茂すると、水路や道が見えなくなり交通事故や農作業事故を誘発し、アカスジカスミカメ等の斑点米カメムシ類を増殖させる可能性もある(3)。夏季に水稲を栽培しないと、圃場にまで侵入してロータリ耕うん時に絡みつく等の問題も確認されている。

オヒシバの生態

オヒシバは20~40℃程度で発芽する夏の雑草で、メヒシバに比べ湛水に近い条件でも発芽するほか(4)、発芽時期は約2か月のばらつきがあるため、関東地方では5~10月の間いつでも発芽する。また出穂は日長に左右されず、温度が高いほど早まる。出穂までに必要な日数は15℃で85日、20℃で50日、30℃で40日程度である(5)。9月中旬ころまでに発芽すると結実・増殖する可能性があるため、オヒシバの防除は発生前の4月頃から、結実の限界となる9月中旬頃まで必要である。

効果的な防除体系

水田のあぜ道を対象にした、グリホサート抵抗性オヒシバの効率的な防除体系は、「農繁期に防除しなくて済むようにすること」である。水稲栽培では、一毛作地帯では4~5月、二毛作地帯では5~6月が最繁忙期であり、この時期に労力を要する除草作業を行うことは難しい。また、出穂前2週間以降から登熟期までの期間は、斑点米カメムシ類の飛び込みの恐れがあるため防除を避けたい。以上を念頭に、除草体系2例を示した(図4)。田植え時期の期間が長くない小~中規模生産者向けの防除体系と、その期間が長い大規模生産者向けの防除体系である。

小~中規模生産者向けの防除体系
土壌処理剤を2剤(DBN剤、DCMU剤)用いる。DBN剤で早春の水田のあぜ道の繁茂を抑えつつ、田植え期間を乗り切る。発生してしまったオヒシバはグルホシネート剤で殺草するとともに、新たな発生をDCMU剤で抑える。最後にジクワット・パラコート剤で残草を処理しつつ、翌年の発生を抑える。なお、グルホシネート剤+DCMU剤の散布は、雑草が繁茂して土壌表面を完全に覆いつくすと効果が低下するため、草高20㎝程度までに散布することが望ましい。

大規模生産者向けの防除体系
オヒシバに効果の高いDCMU剤を先に用いて長期間抑草し、その後、ある程度繁茂したあぜ道に浸透移行性のある茎葉処理剤2剤(グリホサート剤、アシュラム剤)を混用処理して抑制する。最後にジクワット・パラコート剤で残った雑草を処理し、翌年の発生を抑える。なお、アシュラム剤は散布後速やかにオヒシバの成長を止めるものの、完全枯殺までに約1か月かかる。

両防除体系に共通な重要事項
両体系ともに、土壌処理剤を活用して初期発生を抑えることと、種子ができる9月頃までに防除する点にポイントがある(6)。また、ジクワット・パラコート剤は接触型除草剤ではあるが、イネ科雑草の種子に付着すると、翌年の発芽抑制効果が見られるため、終盤の防除での利用が推奨される(7)。
なお、夏季の雑草発生量が少ない場合、ジクワット・パラコート剤の施用は水稲収穫後でも構わない。さらに、あぜ道や農道では傾斜や幅のムラがあるため水平な圃場内のように正確に面積を割り出せないことから、散布量が不足して除草効果が十分に得られないことがあるので、注意が必要である。

  • 図4. グリホサート抵抗性オヒシバの防除体系例

おわりに

あぜ道の雑草はオヒシバだけではないので、基本的には非選択性剤や殺草範囲の広い選択性剤を使うことになる。ただし、イネ科雑草のみを枯殺するキザロホップエチルやフルアジホップP等の選択性剤をグリホサートと混用する方法もある。また、選択性剤と高刈り(高さ10cm程度の草刈り)(8)を組み合わせて害の少ない広葉雑草を優占させる方法、もしくはヒメイワダレソウやクローバー等の、草丈が低く繁茂しても害の少ない広葉草種をカバークロップとして定植して用いる際に、イネ科雑草のみを選択的に枯殺する薬剤を定着の補助的に用いる方法も考えられる。

このページの先頭へ戻る
ISSN 2758-5212 (online)