ドローン防除最前線

植物医師
田中敏章*

はじめに

ドローンの利用は、測量や映像撮影だけでなく農業分野でも近年飛躍的に拡大している。ここでは、農業分野におけるドローンの活用について、①ドローン防除最前線(現状のドローンの活用実態や課題)、②カンキツ栽培におけるドローン防除の実態と可能性、に分け、本稿では①について解説する。

ドローンとは

ドローンの正確な定義は、航空法で「人が乗ることができない遠隔操作又は自動操縦により飛行できるもの(無人航空機)」とされている。このうち回転翼(ローター)が2つ以下のものを「無人ヘリコプター」、3つ以上のものを「マルチローター」と呼び、後者のことを一般的には「ドローン」と呼んでいる。ここでは「マルチローター」のことを「ドローン」と表現する。

ドローン防除の現状

1)農薬散布の実績

無人航空機(ドローンと無人ヘリコプター)を用いた農薬散布による農作物防除については、農水省が各都道府県を通して防除計画及び実績を取りまとめているが、2019年からは無人ヘリコプターのみが調査対象となったため、ドローンによる現在の防除実績については統計情報がない。
2017年時点では、無人航空機による防除が全国で103万3162 ha実施され、そのうちドローンは全体の0.8%(8,299 ha)に過ぎなかった。しかし、2021年には全体の27%程度まで増加していたと推定される(ドローンメーカー推定値)。ドローンが無人ヘリコプターに比べて価格が安く大型法人等でドローンを購入するようになったことや、操縦が比較的楽で騒音も少ないために市街地での利用が広まったことなどが、急増した要因と考えられる。

2)防除農薬

ドローンで防除をする際には、農薬の積載量が少ないことがネックとなる。したがって、高濃度、少量散布の農薬でなければ、費用も時間もかかり事実上使用できない。2023年4月1日現在、ドローンでの防除にも適する無人航空機用として新たに高濃度、少量散布の登録拡大がされた農薬は500剤以上となり、登録数は1212剤となっている(1)。ただし、作物別でみると登録農薬の約半数は稲・麦類で、果樹類は少ない。また、野菜類の登録数は増えているものの、薬剤ローテーションを考えるとまだ十分とは言えない。

3)機体の進化

2016年頃から農薬散布にドローンの利用が拡大していくが、当初登録された機体は積載量(ペイロード)10リットル、5リットルのもので、バッテリーも汎用型で劣化が早く、操縦にも一定の技術が必要であった。しかし、その後のドローン機体の進化は目覚ましく、ペイロードが30リットルの機種もあり、全方位対応のレーダーで障害物を検知したり、3D地図に基づく自動飛行が可能となった機種も登場している(図1)。これは別稿のカンキツ栽培での利用で詳しく解説するが、カメラ付きドローンで撮影した画像を合成し、3D画像を作成することで、斜面等の複雑な農地についても自動航行が可能となる。

  • 図1. 最新型ドローン
    機体のカメラで飛行ルートの測量が可能である。

4)ドローンの飛行、農薬散布許可

ドローンを飛行させ、農薬を散布する際には、事前に国土交通省への申請・許可が必要である(2)。これは通常、年度末に申請して翌年度1年間の許可が取得できる。また、農林水産省から防除のためのガイドラインが出されており、安全に防除することが求められている(3)。

今後の展望と課題

防除におけるドローンの利活用は益々増加すると考えられる。農薬の登録拡大が進めば果樹や露地野菜等への利用も期待でき、規模拡大を目指す農家にとって大きな支えとなる。しかし、法人化された大規模農家等では防除を行うオペレーターを雇用することができても、中小規模の農家やカンキツなど集約型の農業を行う農家には難しいことが多い。また、自ら機体を購入してオペレーターとなることはコストに見合わない場合も多く、作業委託ができる体制を構築することが必要である。
肥料散布におけるドローン利用も拡大している。衛星やカメラ付きドローンで撮影した画像をもとに、部分的に追肥を行うなどの「可変施肥」が可能な技術も開発されている(図2)。
将来的には、画像診断に基づくピンポイント農薬散布も普及すると考えられ、必要最低限の防除で効果を上げる技術の普及が期待される。一部で既に実証が始まっているが、まだ実用段階には至っていない。

  • 図2. ドローンで撮影したナシ園のNDVI画像
    NDVI(正規化植生指標)は植物による光の反射の特徴を生かして、植物の量や活性度を表す指標のことで、ドローンや衛星で撮影したNDVI画像を用いて、農作物の生育状況を把握することができる。また、NDVI画像に基づき、作物の生育診断や可変施肥を行う技術も開発されている。

(*大信産業株式会社)

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iPlant|ISSN 2758-5212 (online)