最近問題のニラのハウス栽培におけるネギネクロバネキノコバエ

群馬県農業技術センター 星野 航佑
群馬県農業技術センター 菊池 優以
群馬県農業技術センター 吉澤 仁志*

*責任著者

はじめに

ネギネクロバネキノコバエ(以下、ネギネ)は、近年埼玉県のネギやニンジン、群馬県のネギやニラで国内での発生が初めて確認された害虫である(1,2,3)。「ネギネ」という名前は、ネギなどの地下深くの「根(ネ)」に生息し、根菜類も加害するという特徴に由来する(3)。ネギネによる被害は、収穫時や地上部に症状が出るまで気づきにくい。これは小さな幼虫が地下深くの根を食い荒らしているからである。現時点でネギネの発生地域はさほど広がっていないが、継続的に問題となっており、対策を怠ると被害が大きくなる。本稿では、群馬県で多発しているニラのハウス栽培におけるネギネの発生の様子や効果的な防除法について紹介する。

ネギネの特徴と被害

ネギネの成虫は体長2~3ミリで、後ろ羽が変形した棍棒状の感覚器官である平均棍(へいきんこん)が淡黄色であるのが特徴である(図1)(1,4)。成虫は飛翔できるものの、主に地表面や葉の上を歩行して移動する。成虫は食害することはなく、食害は幼虫の仕業である。
幼虫の体色は白色で頭部は黒色、老齢幼虫の体長は4~6ミリになる。ネギネの幼虫は、カビ(菌)や有機質を好むほかのクロバネキノコバエ(5)と異なり、新鮮なネギやニンジン、ニラを食害する(1,3,6)。1センチにも満たない小さな幼虫が作物の地下部を食害するために、肉眼では被害に気づくことは困難で、たいてい収穫時や地上部の生育に影響が出てから被害に気づく。ニラでは幼虫が地下部(土中の茎葉)に寄生し(図2)、加害されると株は生育不良になり、その後地上部の茎葉が萎れて枯死する(図3)(1)。

  • 図1. ネギネクロバネキノコバエ成虫の雌(左)、雄(右)と平均棍(矢印)
    文献1より転載。
  • 図2. ニラに寄生するネギネ幼虫
    文献7より転載。
  • 図3. ネギネによるニラの被害
    文献8より転載。

ネギネの発生消長

ニラのハウスでは、成虫が2月上旬から増加し、地温が生育適温(25℃)に近づくにつれて3~5週間ごとに発生のピークが現れる(図4)。すなわち成虫は約1ヶ月おきに発生を繰り返す。また、12~1月にかけてもわずかに発生する(6,7,8)。ネギ及びニンジンでは、成虫は3月中旬~12月に発生する(9)。ニラのハウスでは12~2月の地温が外気温より高く、ネギネの発育零点(発育が止まる温度)を上回るため、ネギネの幼虫が越冬時期でもわずかに発育できる。このため、ネギ及びニンジンの圃場より早くネギネの成虫が発生すると考えられる。

  • 図4. ニラにおけるネギネ発生消長 (2020年10月~2021年8月)
    文献7より転載。

防除対策

土の中に潜んでいるネギネの幼虫を発見することは難しいため、黄色粘着板の設置等により成虫を発見次第防除することと、収穫後の防除により次作の発生源とならない圃場づくりをすることが基本的な対策となる。

(1)熱による防除
ニラの収穫後、ニラの畝を株ごと農業用ポリエチレン(厚さ0.03ミリ)で覆い、ハウスを3日間密閉処理して地温を30℃以上に維持することで、ネギネを防除できる(6)。

(2)薬剤による防除
ニラのハウス栽培では、育苗期、生育期(4~11月)、捨て刈り(そろった新芽を出させるために、古い葉などを刈り取ること)直後(12月)、収穫期(12~4月)に成虫の発生が確認された場合は、メソミル水和剤の灌注処理またはジノテフラン水溶剤の株元灌注処理、クロチアニジン水溶剤またはシペルメトリン乳剤の散布処理を行う(8)。また、収穫後のニラの残さには幼虫が寄生している可能性があるので、カーバムナトリウム塩液剤により収穫後のニラを枯死させ、株に寄生しているネギネの蔓延防止を行う(8,10,11)。

(3)その他の対策
カーバムナトリウム塩液剤を用いない残さ処理方法として、ニラの残さを圃場にすき込む際に、石灰窒素とともに混和することで、残さの腐熟を促進させることも有効である(10)。また、ネギネ発生圃場で使用した機械を未発生地に持ち込む場合には、機械をよく洗浄する必要がある。ネギネ幼虫は多湿を好み、水はけの悪い場所で発生しやすいので、明渠(圃場の排水溝)を設置するなどして水はけを改善することも重要である(10)。

引用文献

  1. 群馬県農業技術センター (2019) 「平成30年度病害虫発生予察特殊報第3号」
  2. 埼玉県病害虫防除所 (2016) 「平成28年度発生予察情報 特殊報第1号」
  3. 小俣良介 (2017) 「秋冬ネギ及び春ニンジンに発生したクロバネキノコバエ科の一種ネギネクロバネキノコバエ(仮称)(Bradysia sp.)について」植物防疫 71(4):260-263.
  4. 小俣良介ら (2019) 「新害虫ネギネクロバネキノコバエBradysia odoriphagaと混発するクロバネキノコバエ類の現場における簡易な見分け方」植物防疫 73(9):576-580.
  5. フリー百科事典 ウィキペディア日本語版「クロバネキノコバエ」 (2023年5月23日閲覧)
  6. 星野航佑 (2022) 「ニラハウス栽培におけるネギネクロバネキノコバエの発生消長と防除対策」植物防疫 76(9):499-503.
  7. 群馬県農業技術センター(2022)「群馬県のニラハウス栽培におけるネギネクロバネキノコバエの発生消長調査について」群馬の植物防疫218
  8. 群馬県農業技術センター (2020) 「ネギネクロバネキノコバエ防除の手引き(令和2年3月版)」
  9. 埼玉県農業技術研究センター (2019) 「ネギネクロバネキノコバエ防除マニュアル(令和元年10月版)」
  10. 農研機構 (2020) 「ネギネクロバネキノコバエBradysia odoriphaga防除のための手引き(技術者向け)―2020年改訂版―」
  11. 野仲信行(2023)「古株枯死」とは?〜栽培の上手な終わらせかた〜 i Plant 1(1)
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ISSN 2758-5212 (online)