渡邊 健
はじめに
青果店やスーパーで購入したサツマイモが食べる前に腐ってしまったことはないだろうか?ひょっとして、購入したサツマイモを冷蔵庫で貯蔵してはいなかっただろうか?サツマイモは中南米原産の熱帯植物(1)なので、9℃以下で長く貯蔵すると低温障害が生じて腐敗しやすくなる(2)。また、貯蔵中に腐敗する原因は、低温の他、塊根(いも、イモ、芋:以降、いもと表記)に生じた傷と腐敗性の病原菌が関与している(3)。ここでは、サツマイモが腐る原因について紹介する。
サツマイモは収穫から出荷までに沢山の傷が生じる
サツマイモは、機械等で収穫する際にいもの表面に無数の切り傷や打撲傷が生じる。この傷を修復させるため、キュアリング(4)を行い、貯蔵庫内で適切な温湿度条件下で貯蔵する。しかし、出荷調製時に機械でいもを洗浄して表面の土を洗い落とすため、再び多くの切り傷や打撲傷が生じ、さらにいもの両端を刃物で切断すると大きな切断傷が生じる。これらの傷から各種病原菌(カビ類)が侵入して腐らせることになる。腐敗を引き起こす病原菌は主に土壌中に生息しているが、大気中にも存在する。
サツマイモを腐らせるカビ類による病害
サツマイモに良くみられる代表的な腐敗性病害は以下の3種である。
1)サツマイモ軟腐病(5)(図1)
カビの一種、リゾープス菌(Rhizopus stolonifer等)によって引き起こされる。発病適温は30℃前後で、収穫直後の秋出荷と貯蔵後の春出荷時に発生が多い。最初にいもが暗褐色の水浸状になり、のちに軟化・腐敗する。多湿条件下では、いもの表面に白色のくもの巣のような菌糸が密生する。腐敗したいもはアルコール発酵臭を放つ。
2)サツマイモ青かび病(5)(図2)
カビの一種、ペニシリウム菌(Penicillium expansum等)によって引き起こされる。発病適温は5~10℃と低く、冬季の低温条件下で発生する。いもの表面に黒褐色の円形病斑を形成し、病斑上には青緑色の胞子(分生子)を多数形成する。腐敗は徐々にいもの内部に進展する。
3)サツマイモ褐色乾腐病(5)(図3)
カビの一種、トリコデルマ菌(Trichoderma sp.)やフザリウム菌(Fusarium solani)によって引き起こされる。発病適温は20~27℃で、いものなり首※および先端部から発病することが多い。腐敗がいもの内部に進展すると、周皮にしわが生じてしぼむが、さほど軟化しない。いもの腐敗部分を切断すると灰白色、褐色、黒褐色の濃淡が混じり合ったまだら模様になっていることが多い。
※なり首:サツマイモのいもと茎が繋がっている部分。
おわりに
店頭で購入したサツマイモは、洗浄、出荷調製してあるため、いもには無数の傷があり、腐敗リスクが高い。したがって、間違っても冷蔵庫の野菜室で保存しないように注意されたい。購入したサツマイモを保存する場合は、いもを1本ずつ新聞紙で包んで段ボール箱に入れ、直射日光が当たらない、比較的涼しく温度変化の少ない収納スペース等で保存することをお勧めする。
もし、家庭菜園や収穫体験などの土付きのいもが入手できた場合は、土付きのまま洗わずに新聞紙で包んで風通しの良い冷暗所で常温保存し、調理する前に洗浄する。土付きのいもは店頭で購入したいもと比較して傷が少なく、傷も自然治癒していることが多いため、腐敗しにくい。




