サツマイモを腐りにくくするためのキュアリングとは?

東京大学大学院農学生命科学研究科
渡邊 健

はじめに

キュアリング(Curing)とはサツマイモを腐りにくくするための処理技術である。キュアリングは「傷を治す」という意味の英語「キュア(Cure)」からきている。キュアリングはサツマイモやカボチャ、ナガイモ等の農作物を収穫後に一定の温湿度で保存し、傷口を自然に修復させ、腐敗を防ぎ長期保存を可能にする処理技術である。その詳細は農作物の種類によって異なる。ここでは、サツマイモのキュアリングについて紹介する。

サツマイモのキュアリング

サツマイモは収穫時に大小様々な切り傷や打撲傷が塊根※1(いも、イモ、芋:以後、いもと表記)の表面に生じる。それらの傷口からサツマイモを腐敗させる軟腐病菌や褐色乾腐病菌等のカビ類が感染しやすい(1、2)。そこで、収穫したサツマイモを速やかにキュアリング処理できる貯蔵庫に積み込み、ボイラーによる蒸気やヒートポンプと冷房機を利用して室内を温度33±2℃、湿度90~95%に保ち、4日間程度(目標約100時間)保存すると、いもにできた傷口を自然に治癒することができる(3)。

※1塊根(かいこん):植物の根が養分を貯蔵するために肥大し、塊状になったもの。

コルク層の形成

キュアリングにより加温・加湿処理を行うと、いもの表皮下にコルク層※2が4層程度形成され傷口が治癒する(図1、図2)。コルク層が形成されると、腐敗を引き起こすカビ類はいもの内部に侵入できなくなる。キュアリング処理自体には殺菌効果は全くないので、処理以前に腐敗性の病原菌が感染していたいもには効果がない。また、収穫直後の新鮮ないもほどコルク層の形成が早いため、キュアリングはいもの収穫後速やかに処理することが重要である。また、処理前後の加温と放熱を速やかに行うことやキュアリング処理中の温湿度を均一に維持することも大切である。

※2コルク層:植物の茎や根の表皮組織の内側に形成される保護組織。細胞が枯死して内部にスベリン物質が蓄積された細胞層からなり、植物体の内部を保護し、水分の蒸散を防ぐ重要な役割を果たしている。コルク層は植物の成長に伴って徐々に厚みを増し、外部からの物理的な傷害や病原体の侵入を防ぐ防御機能を持っている。

  • 図1. キュアリング処理後、表皮下に観察されたコルク層
  • 図2. 打撲傷の下に形成されたコルク層

おわりに

キュアリング処理後は、速やかに貯蔵庫を開放して12~24時間かけて貯蔵適温(13~15℃)まで下げる。その後は貯蔵庫を密閉し,湿度90%以上で貯蔵する。サツマイモは、キュアリングして適温・適湿条件で貯蔵すれば長期保存が可能で、ほぼ年間を通じて出荷が可能になる。
キュアリングしたサツマイモは食味が向上するという話を良く耳にするが、これは間違いである。キュアリングは、あくまでも傷を修復させる効果しかない。キュアリング処理後、貯蔵庫で貯蔵するうちにデンプンが糖化し、甘みが増すのである。

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ISSN 2758-5212 (online)