侵入害虫「クビアカツヤカミキリ」防除の新戦略

日本農薬株式会社
犬飼 佳代
児玉 洋
長谷部 元宏*
*責任著者

はじめに

クビアカツヤカミキリは、近年日本国内で急速に分布を拡大している侵入害虫であり、果樹やサクラなどの景観樹木に大きな被害をもたらしている(図1)。ここではメタフルミゾン水和剤(商品名:アクセルフロアブル)を使用した新しい処理方法によるクビアカツヤカミキリ防除法を紹介する。

  • 図1. クビアカツヤカミキリと被害樹
    A:成虫、B:老齢幼虫、C:サクラの被害、D:ウメの被害。

クビアカツヤカミキリについて

クビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)は東アジア原産の侵入害虫で、2012年に初めて国内で確認され、現在は関東、東海、近畿、四国などに分布している(1, 2)。幼虫は樹木に侵入、食害し衰弱・枯死させるため、経済的被害だけでなく景観を損ねることから特定外来生物に指定されている。最初サクラで被害が確認されたが、現在はモモ、スモモ、ウメなど、いずれもバラ科樹木・果樹にも広がっている。6~8月に成虫が樹から飛翔して樹皮の隙間に産卵し、ふ化後、幼虫は樹皮下に侵入して長期間食害しながらフラス(糞と木屑の混合物)を排出する(3, 4)。幼虫は樹内部に生息するため初期被害に気付きにくく、薬剤が到達しにくいため薬剤防除は難しい。

有効成分メタフルミゾンとは

メタフルミゾン水和剤はチョウ目やコウチュウ目の害虫に効果を示し25%フロアブル製剤(商品名:アクセルフロアブル)として販売されている。有機リン剤やネオニコチノイド剤とは異なる作用性を持つため、抵抗性発達を防ぐ目的で体系防除に活用しやすい。また毒性の低い普通物に該当するため環境への負荷が少ないと考えられる。
本剤はサクラ、モモ類、スモモ、ウメのクビアカツヤカミキリ防除に農薬登録があり、散布、樹幹散布、樹幹注入の3通りの使用方法がある(5)。

クビアカツヤカミキリに対する効果の特長

メタフルミゾン水和剤はカミキリムシ類全般に対する効果が高く、クビアカツヤカミキリ成虫に対しては、カンキツの害虫であるゴマダラカミキリよりも高い効果を示す。また、成虫に対し経皮(昆虫体表からの薬剤の取り込み)と経口(餌による口からの薬剤の取り込み)ともに効果が高く(図2)、処理1日後から翅を広げる特徴的な異常症状を示す(図3)。なお本剤は昆虫の神経伝達にのみ作用するため哺乳類への影響はない。

  • 図2. 経皮および経口※※処理による効果比較
    経皮:虫体表面全体に薬剤処理(虫体浸漬法)。
    ※※経口:餌に薬剤処理(飼料浸漬法)。
    メタフルミゾン水和剤1,000倍(250ppm)および2,000倍(125ppm)。
  • 図3. メタフルミゾン水和剤処理クビアカツヤカミキリ成虫の作用症状
    1,000倍(虫体+飼料浸漬処理) 処理1日後。

効果の実例

大阪府内の圃場(日本農薬(株)総合研究所内圃場)でモモ、スモモ、ウメにクビアカツヤカミキリによる被害が認められたため、1~2年目は被害樹とその周辺果樹、3~5年目は被害樹のみに対してメタフルミゾン水和剤100倍の樹幹散布を行ったところ、被害樹数は年々減少し、被害の発生および拡大を抑えられた(図4)。幼虫が寄生しフラスが排出されている樹に樹幹散布した結果、フラス排出が停止していたため、樹の中の幼虫に対しても効果があったと考えられた。

  • 図4. メタフルミゾン水和剤の効果

なぜ効果を示すのか?

樹表面に付着したメタフルミゾンは樹内に移行しにくい。それにもかかわらず、樹内に生息する幼虫に対して効果を示した要因は以下の通りであると考えられる。
1. 幼虫の食害部位:幼虫は樹皮下の内樹皮と形成層を食害し、部位によっては樹皮の厚さ2~3㎜を残して食害している(図5)。
2. 幼虫の行動:幼虫は外樹皮に侵入した後も、フラスを排出する孔を形成するため、薬剤を含む樹皮上に顔を出す(図6)。
3. 樹皮上の有効成分の残存量:メタフルミゾンはサクラの樹皮の中でも外樹皮に分布しており、散布後1~2か月程度外樹皮に残存する(図7、8)。
従って、クビアカツヤカミキリの幼虫が活動した際に、外樹皮付近に多く残る有効成分のメタフルミゾンを摂取することで防除効果が得られると考えられる。

  • 図5. 食害部位
    日本農薬(株)総研圃場、2022年5月11日、モモ(品種:白鳳)被害枝(径6-7cm)。
  • 図6. フラス排出口
    日本農薬(株)総合研究所圃場(大阪府)。
    2022年5月11日、モモ(品種:白鳳)被害枝(径約10cm)。

 

  • 図7. サクラ樹皮中のメタフルミゾン残存量
    メタフルミゾン水和剤 200倍 主軸から株元に散布。
    作物:サクラ(品種:ソメイヨシノ)、場所:東京都、処理時期:2021年6月15日。 
    メタフルミゾン水和剤 1000倍 散布。
    作物:サクラ(品種:ソメイヨシノ)、場所:群馬県、処理時期:2021年8月19日。
  • 図8. メタフルミゾンの残存部位とクビアカツヤカミキリの生態

最後に

物流のグローバル化に伴い特定外来生物の日本国内への侵入は今後も増加すると考えられる。新規薬剤の開発には時間とコストがかかるため、今後も既存資材を活用した新たな効用の発見による防除対策の充実が望まれる。

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ISSN 2758-5212 (online)