ニンジンのトンネルハウス栽培で発生する特徴的な病害について

徳島県立農林水産総合技術支援センター
米本 謙悟

はじめに

徳島県のニンジンは、「春にんじん」とよばれ、10〜12月に播種し、3〜5月に収穫する。大型のトンネルハウスで栽培されるため、雨に当たることなく栽培できる(図1)。その後、生育に合わせてトンネルに径約8センチの換気穴を開け、約130〜150日間栽培される。このような栽培形態にともない、他県ではあまり見ない植物病が発生する。ここでは、そのうち3種の植物病を紹介したい。

  • 図1. 徳島県のニンジン栽培におけるトンネルハウスの外観(左)と内部(右)

ニンジン菌核病(病原菌:カビ(糸状菌))

1月下旬から発生する。これはトンネルハウスを利用した栽培方法によると考えられる。はじめ、ニンジンの根の上部(葉の付け根部分)が黒褐色に変色する。症状が進むと白い綿状の菌糸を生じ、黒色鼠糞(そふん、ネズミのふん)状の菌核を形成する(図2)。軟腐病のような悪臭はない (1)。本県以外では発生は少ない。病原菌はカビの一種(Sclerotinia intermediaS. sclerotiorum)であるが、徳島県ではS. sclerotiorum によるとされる。

防除方法:適期換気と排水対策に努めるほか、本葉5~6枚頃に土寄せを行うと同時に薬剤防除を行う。有孔フィルムを用いるとトンネルハウス内の湿度が下がり、発病が抑制される (2)。

土寄せ:日焼けにより青首と呼ばれるニンジンの地際部が緑色に変色するのを防ぐため、本葉5~6枚頃にニンジン根部の地際部に土を寄せ日焼けを防ぐこと。
有孔フィルム:小さい穴が一定間隔で空いているフィルム。栽培全期間を通して一定の換気率が確保できる。

  • 図2. ニンジン菌核病

ニンジン斑点細菌病(病原菌:細菌の一種)

1979年に徳島県内のトンネルハウス内で初めて確認された (3)。その後、埼玉県や和歌山県でも発生している (4)。葉および葉柄に症状が出る。初め、小葉の先端や葉柄に少しへこんだ黒褐色でシミ状の小斑点が現れ、その後、病斑が拡大して周囲が黒褐色、中央が茶褐色で油浸状となり、葉の周りは黄変する。新葉に発生することは少なく、下位葉に多い。1月中旬から発病し、2月には目立つようになる(図3)。本県以外での発生は少ない。病原菌は細菌(Xanthomonas hortorum pv. carotae)で、2010年には徳島県内で広く発生した (5)。  

防除方法:適期の換気と排水対策に努め、早播きの作型では、1月中旬からカスガマイシン・銅水和剤(商品名:カスミンボルドー)、オキソリニック酸水和剤(商品名:スターナ水和剤)、銅水和剤(商品名:コサイド3000(野菜類登録))により予防する(2025年1月現在)。

  • 図3. ニンジン斑点細菌病

ニンジン苗立枯病(病原菌:カビ)

2000年代初めに徳島県で種子の発芽前の不発芽や発芽後の立枯症状が発生し、問題となった(図4)。間引きの手間を省くため、播種量を減らした結果、目立つようになった。はじめ、地際部付近に病斑を形成し、その後倒伏する。病斑部と健全部の境目ははっきりしており、葉身部は赤紫色に変色して枯死する。発病は本葉1~2葉期頃まであり、発芽直後に感染するとそのまま枯死する。病原菌(Rhizoctonia solani)は、国内では2種類(菌糸融合群AG-4とAG-1)確認されている (6, 7, 8)。

防除方法:トルクロホスメチル水和剤(商品名:リゾレックス水和剤)が防除薬剤として登録されている(2025年1月現在)。

  • 図4. ニンジン苗立枯病
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ISSN 2758-5212 (online)