窪田 直也
清田 義子
茨城県県南農林事務所 稲敷地域農業改良普及センター
大田 真理子
茨城県農業総合センター病害虫防除部
小河原 孝司*
*責任著者
はじめに
イネカメムシは、イネに斑点米※1や不稔籾※2を引き起こす害虫であるが、近年、全国的に増加し問題となっている(1)。茨城県病害虫防除所が発生予察(2)のために行うすくい取り調査においても、2015~2019年当時は斑点米を引き起こすカメムシ類の8割近くがクモヘリカメムシであったが、2020~2024年にはその半数近くをイネカメムシが占めるようになった(図1)。イネカメムシは他の斑点米カメムシ類と異なり畦畔雑草にはほとんど生息しないので、出穂時期に離れた越冬場所から水田に直接飛来している可能性がある。したがって、イネカメムシの越冬場所や生態の解明は、効率的な発生予察や防除対策を講じる上で重要である。我々はイネカメムシの越冬場所に着目し2024年から調査を行っている。本稿ではその結果分かった成虫の越冬場所や生態について紹介する。
※1斑点米:茶褐色の斑点を生じた米粒
※2不稔籾:種子ができない籾
越冬場所の探索
イネカメムシは成虫で越冬する(3)。越冬場所は、コノテガシワ樹幹部に積もった落葉のなか(4)や雑木林の中にある日当たりのよい草地(5)、ジャノヒゲ株の折り重なる葉の間 (6)などであることが分かっている。そこで、これらに似た場所がほかにないか調べた。その結果、図2に示すイネ科雑草の株、ササの株元、落葉堆積物の下で越冬成虫が確認された。これらの場所はいずれも日当たりは良好で、1~20頭/2程度の個体が越冬していた。また別の調査では、周辺に水田が無い公園のジャノヒゲ(図3)で200頭以上が越冬する様子を確認した。
越冬場所の特徴
イネカメムシの越冬成虫は、日当たりがよく落葉堆積物がある場所では、南側に集中して見つかり、北側では見つからなかった。また、茂ったササの株元の落葉が堆積しているところや、落葉の吹き溜まりやすい場所に越冬成虫が多く、越冬場所に適している。一方、イネカメムシが集団越冬していたジャノヒゲは、株内が乾燥や風雨等などの影響を受けにくく越冬に適した条件が整っているためと考えられた。
越冬成虫の生態
越冬成虫の生態を知るために、夜間にジャノヒゲ株を観察した。ほとんどの成虫は日中と同じく株内部に密集していた。しかし、光を当てると株内部に生息していた成虫は株表面に集まり、活発に活動し始めた。この時の夜温は約15℃(5月上旬)であった(図4および動画1)。夜温が20℃以上(6月上旬)となると、飛翔するものもあった(図5および動画2)。
おわりに
カメムシ越冬調査は、一定量の落葉を収集し成虫数を調べる方法や、植物の株元を一定時間手でかき分け成虫を数える方法(5)等があるが、いずれも労力が要る。ジャノヒゲに集団越冬することがわかったことから、ジャノヒゲが生えている場所で調査すれば効率的に調査できることが分かった。今後は、発生量を早期に予測する技術を開発する必要がある。
引用文献
- 岩橋祐太・内橋嘉一(2025)「再び増えてきた水稲害虫「イネカメムシ」」iPlant 3(8). (2025年9月12日閲覧)
- 根本文宏(2025)「病害虫発生予察情報を活用して、植物病害虫から農作物を守ろう」iPlant 3(6). (2025年9月12日閲覧)
- 小林尚(1960)「日本産カメムシ上科の幼期に関する研究IX. Lagynotomus, Aeliaおよびそれらの近縁属の幼期」応動昆 3: 221-231. (2025年9月12日閲覧)
- 住田歩夢・竹松葉子(2022)「山口県におけるイネカメムシの越冬生態について」植物防疫 76(2): 73-75. (2025年7月8日閲覧)
- 鳥飼悠紀・樋口博也(2022)「イネカメムシ(カメムシ目:カメムシ科)成虫の越冬場所からの移出時期と水田への飛来時期」応動昆 66: 87-89. (2025年7月8日閲覧)
- 柴田知実ら(2025)「水田への飛来前にジャノヒゲ株内に生息するイネカメムシの個体数推移」関西病害虫研究報 67: 114-116. (2025年7月8日閲覧)




