イチョウの枝折れの原因は?

黎相庭園 / P-T Research
笹部 雄作

はじめに

イチョウは秋の黄葉が美しく季節感を彩る樹木であり、街路樹や公園樹として広く植栽されている。東京都では「都の木」に選定され、街路樹としての栽植量はハナミズキに次いで2番目に多い(1)。また、イチョウの種子は食用に供され、「銀杏」とよばれる。高度経済成長期に全国で大量に植えられた街路樹や公園樹は、老齢化・大径化が進み、幹の腐朽や強度低下などのリスクを抱えた木が増えている。こうした危険木による倒木・落枝事故は、最近SNSやニュースでも頻繁に取り上げられるようになった。ここでは、イチョウの倒木・落枝が起きる原因について紹介する。

イチョウの落枝事故と台風被害

2022年、鹿児島県曽於(そお)市の小学校校庭でイチョウの大枝が落下し、犠牲者が出る事故が発生した(2)。2024年にも東京都日野市の緑地で同様の事故が起きた(3)。両事故に共通していたのは、枝が突如折れ落ちて、直下の人を直撃した点である。また、2018年に大阪を襲った台風21号により、多くのイチョウの幹や大枝が途中から折れる被害が報告された(図1, 2)。

  • 図1. 台風によるイチョウの被害の様子1
  • 図2. 台風によるイチョウの被害の様子2

イチョウはもともと折れやすい

イチョウには雌雄があり、着果するのは雌株のみである。雌株は果実の重みによって枝が垂れやすく、雄株は枝が上方へ伸びる樹形になりやすい。イチョウの果実は春の受粉後から肥大しはじめ、7月には収穫時に近い大きさになる(図3)。受精が9月上旬以降であることから「果実の肥大も遅い」と誤解されやすいが、実際には初夏の時点で枝への荷重はすでに最大となっている。冬季には、果実をつけたまま折れた枝がしばしば見られることからも、イチョウが本来折れやすい性質をもつ樹種であることが分かる。

  • 図3. 果実をつけたイチョウの雌株の枝の様子

イチョウ胴枯病

このようなイチョウの落枝や倒木の原因の一つに、イチョウ胴枯病がある。これはカビの一種であるフザリウム菌(Fusarium sp.)によっておこる(4)。本病ははじめ幹の地際部が侵され、病患部が幹を一周すると、葉が小型化し黄化が樹冠部全体に拡がり、やがて萎凋枯死する(5)。しかしながら、幹の病患部は樹皮が剥がれるまで分かりにくく、葉先の枯れが目立つ程度である(図4)。枯れかけた葉にはフザリウム菌の菌糸や胞子が観察される(図5)。本病のような植物病のほか、ほかの生理的要因や、環境的要因などにより、イチョウは枝枯れや落枝を起こし、最後には倒木いたる。

街路樹のイチョウは定期的に剪定されることが多いため比較的安全が保たれているが、公園や緑地のように剪定管理が乏しく放置されがちな場所では、伸びた枝の自重や風圧の影響で枝折れリスクが高まるため、このような場所では落枝や倒木に十分に注意する必要がある。

  • 図4. イチョウ胴枯病の症状
  • 図5. フザリウム菌の胞子
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ISSN 2758-5212 (online)