モロヘイヤに発生した新しい植物病

香川県農業試験場病害虫防除所
森 充隆

はじめに

モロヘイヤは、アオイ科(ツナソ属)の一年生の野菜である。高温を好むので、日本では1980年代から6月~9月の夏期にかけて栽培されている(1)。β-カロチンやカルシウム含量の高い栄養豊富な野菜として知られ、家庭菜園でもよく栽培される。香川県では県で育成された品種「さぬきのヘイヤ」(2)が露地で栽培されている。近年、県内産地で、茎が黒変したのち枯死する症状が多発して問題となった。ここでは、その原因と防除対策を紹介する。

原因は?

① 最初に分離されたカビ
モロヘイヤの主な症状は、主茎に黒変症状が生じ(図1A)、のちに落葉して枯死した(図1B)。枯死株の茎表面は白色のカビで覆われ、顕微鏡で見ると胞子の特徴から炭疽病菌であったことから、炭疽病が原因と考えられた。しかしよく観察すると、この黒変症状はモロヘイヤの葉を収穫したあとの枝から拡大(図2)していることが分かった。黒変まもない茎を顕微鏡で観察するとバクテリアが確認された。このことから、バクテリアによる可能性も疑われた。

② 犯人はバクテリアだった
そこで、このバクテリアと炭疽病菌をそれぞれ分離し、モロヘイヤに対する病原性を調べた。バクテリアを接種したところ、最初に観察された黒変症状と株の枯死が現れたが、炭疽病菌では再現されなかった。このことから、本症状はバクテリアによる病害と結論された。病原菌の同定を静岡大学大学院に依頼したところ、シュードモナス属のバクテリア( Pseudomonas cichorii)であると分かり、モロヘイヤの新たな植物病であることから、病名を「モロヘイヤ茎枯細菌病」と命名した(3)。

  • 図1. モロヘイヤの黒変症状
    A. 主茎の黒変症状
    B. 黒変部が全体に広がり枯死した株
  • 図2. 葉の収穫後の枝に発生した黒変症状

防除対策

本病は、モロヘイヤの葉を収穫したあとに枝から黒変部が拡大することから、収穫の際にできた傷からこのバクテリアが侵入し、増殖していると考えられる。また、バクテリアの感染は降雨により影響を受けるため、露地栽培では雨が降ると発病が助長され、ハウス栽培やトンネル栽培のように作物をビニールで被覆して雨よけ栽培にすると発病が抑制されることが、産地で確認されている。つまり、雨よけ栽培が防除対策として有効である。露地栽培では、バクテリアが降雨とともに収穫後の傷口から感染するので、傷口を殺菌剤で保護することにより感染を防ぎ、防除効果を高める必要がある。現在、本病に登録農薬は無いが、有効な農薬として銅水和剤(商品名:表1)を栽培期間中に複数回行う収穫直後に散布すれば発病を抑制することが期待できる。銅水和剤は野菜類に登録があり、日本農林規格(JAS)の有機農産物栽培でも使用できる殺菌剤であり、野菜類の細菌病全般に防除効果が期待できる。

  • 表1. 野菜類に農薬登録のある銅水和剤

おわりに

収穫期間中に降雨が多くなると株が枯死する病気であり、収量に及ぼす影響は大きい。そこで、本病が新しい植物病であることをふまえ、的確な診断や防除に関するより細やかな情報提供を行い、産地維持を図りたい。

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ISSN 2758-5212 (online)