ネギの新害虫ネギハモグリバエ(バイオタイプB)の発生と防除

京都府農林水産技術センター
德丸 晋虫*
中島 優介
*責任著者

はじめに

ネギハモグリバエは、幼虫がネギ、ニラ、タマネギなどのネギ属の野菜を加害する。ネギやニラでは、収穫物となる葉が加害されるため、生産物の品質が低下する。2000年代初めに京都府などの葉ネギ栽培で多発したが(1)、防除効果の高い殺虫剤の開発により沈静化した(2)。しかし2016年頃から、従来の食害痕とは異なるネギ葉全体が白化する被害が、全国各地のネギ栽培ほ場で見られるようになった(図1)。
症状が変化したのは、従来と異なるタイプのハモグリバエが発生したためではないかと疑われた。そこで、ネギほ場から採取した成虫の遺伝子解析をおこなったところ、両者は遺伝子型が異なることが分かり、従来のハモグリバエをバイオタイプA(以下、A系統と略記)、新たに発生が確認されたハモグリバエをバイオタイプB(以下、B系統と略記)とした(3)。本稿ではA系統とB系統の発生現場での見分け方、生態学的な違い、防除対策について紹介する。

万能ネギや九条ネギなど、葉の部分を食用にするネギの総称。

  • 図1. ネギハモグリバエB系統によるネギの被害

系統の見分け方

A系統とB系統は遺伝子増幅法(PCR法)により判別できるが、生産現場で迅速に判別し防除する場合には、葉の食害痕(絵描き痕)により簡便な識別ができる。A系統では1葉あたり1〜数匹程度の幼虫が葉の表側と裏側を交互に加害するために、食害痕は不規則な破線状になる(図2左)。一方、B系統では1葉あたり10匹以上の幼虫が葉の表側のみを集中的に加害するために、食害痕はひとつなぎになる(図2右)(3)。

  • 図2. ネギハモグリバエA系統とB系統の食害痕の違い

A系統とB系統の生態学的な違い

両バイオタイプのネギハモグリバエ雌成虫について産卵から羽化までの日数を調べたところ、B系統の産卵から羽化までの発育日数は、温度が高くなるほど短くなるが、35℃では孵化しなかった(図3)。また、18〜30℃までの産卵から羽化までの発育にかかる日数はA系統よりも短かかった(図3)(2, 4)。これらのことは、B系統はA系統よりも高温に適応していることを示している。

  • 図3. ネギハモグリバエ両バイオタイプの卵から成虫までの発育日数(長日条件下)

B系統に対して有効な殺虫剤

薬剤の殺虫効果は、系統、幼虫および成虫によりそれぞれ異なり、AおよびB系統の幼虫に対して高い殺虫効果を示した殺虫剤は、シアントラニリプロール水和剤(商品名:ベリマークSC、ベネビアOD)のみであった。また、B系統の幼虫に対して高い殺虫効果を示した殺虫剤は、シペルメトリン乳剤(商品名:アグロスリン乳剤)およびチオシクラム水和剤(商品名:リーフガード顆粒水和剤)であった。一方で、AおよびB系統の成虫に対して高い殺虫効果を示した殺虫剤は、シペルメトリン乳剤のみであった。
両系統に対して殺虫効果の高い薬剤を使えば効率的と考えられがちであるが、殺虫効果の高い薬剤を繰り返し使用すると殺虫剤に対する効き目が低下する可能性が高まる。したがって、あらかじめ専門機関や植物医師にどちらのバイオタイプであるか診断してもらうことによって、生産者が自身の圃場に発生している系統を把握し、薬剤の選択肢を拡げることが重要である。

他のネギ病害虫との見間違い

B系統の食害によりネギは葉全体が白化する。同じような症状を引き起こす植物病は、シロイチモジヨトウおよびべと病がある(図4)。生産現場では、べと病と勘違いして殺菌剤を散布する例や、シロイチモジヨトウと思い込み、ネギハモグリバエに対する殺虫効果の低い殺虫剤を散布することがある。診断にあたっては、これらの病害虫と見間違えないよう注意する必要がある。

  • 図4. シロイチモジヨトウ(A)、ネギハモグリバエB系統(B)、べと病(C)によるネギの被害
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ISSN 2758-5212 (online)