ツマグロアオカスミカメによる花木「スノーボール」の被害

植物医師
大平 純一

はじめに

北海道で生産される花きは、冷涼な気候を生かした夏秋期の生産が主で、切り花類や鉢もの類だけでなく、花木(かぼく)類の生産も盛んである。なかでもスノーボール(スイカズラ科ビブルナム属)は白くて小さなアジサイに似た花を咲かせ、ブーケやテーブルアレンジなど、ブライダル需要が多い。このスノーボールにカメムシ類(ツマグロアオカスミカメ)の吸汁による被害が発生し、出荷量が減少することがある。本稿では、スノーボールのツマグロアオカスミカメによる被害と有効な防除対策について紹介する。

被害

ツマグロアオカスミカメは成虫、幼虫ともに植物のやわらかい部分に口吻(こうふん)を突き刺し、吸汁被害を招く。ツマグロアオカスミカメの被害は、ナスやキュウリなどの野菜類をはじめとして、チャやブドウなど多くの作物で発生する(1)。花きでは、露地栽培のキクや本稿で紹介するスノーボール、キイチゴなど、切り花や花木、葉ものに被害が見られる(図1)。これらの花きにおける被害は、ツマグロアオカスミカメの吸汁直後には確認できないが、花蕾(からい;つぼみのこと)や葉が成長したタイミング、すなわち出荷時期付近や出荷後になると症状が見えるようになる。
スノーボールはその名のとおり、白い花を咲かせるが(図1A)、ツマグロアオカスミカメに吸汁されると小花(しょうか;スノーボールは一つひとつの小さな花が集まってできたもの)に黒色の小斑点が生じる(図1B)。スノーボールは蕾の状態で出荷されるため、小売店の店頭や購入後に開花した時点で、被害が分かる。したがって、選花時に被害の有無を判別し仕分けするのは難しい。

  • 図1. ツマグロアオカスミカメの被害
    A.正常なスノーボール
    B.加害されたスノーボール
    C.葉もの(キイチゴ)の被害

発生状況

卵で越冬し、年3回成虫が発生する。春、スノーボールの収穫前にふ化した若齢幼虫(第1世代)が花蕾を吸汁する(図2A)。収穫は6月上旬に終了し、未収穫の枝も整理されるため、老齢幼虫や成虫は周辺のほ場に移動する。その後、次年度の採花枝が伸長するとスノーボールに再び集まり、成虫と幼虫(第3世代)が混在し発生する(図2B,D)。秋にスノーボール上に産卵された卵が越冬する(図2C)。

  • 図2. ツマグロアオカスミカメの発生状況
    A.スノーボール花蕾部の幼虫(○内)
    B.秋期、葉柄上の成虫(○内)
    C.スノーボ−ル葉柄の溝への産卵
    D.ツマグロアオカスミカメの発生状況(秋期の北海道で実施。すくい取りによる捕獲頭数/10株当)

防除法

薬剤防除が対応策の中心である(2)。防除は春期と秋期に行う。春期の防除の実施にあたり、初発時期を確認する必要がある。確認は5月上旬~中旬にスノーボールやシャクヤクほ場で行う。初発確認後、ピレスロイド系薬剤のペルメトリン乳剤を用いて防除を開始する。従来は5月中旬の防除が中心であったが、近年は収穫中も幼虫の発生が続くため、5月下旬の防除も追加している。また、幼虫は花蕾の内部に潜むため薬液が届きにくく(図2A)、丁寧な散布が必要である。
枝の伸長する夏になると、成虫は周辺ほ場に移動するため、スノーボールでの防除は効果がない。8月下旬になると翌年の採花枝に再び集まり(図2D)、葉柄に盛んに産卵するため(図2B,C)、この産卵のために集まる成虫に対して秋期の防除を行うのが効果的である。秋期の防除により翌春の被害を軽減することができる(3)。
スノーボールは秋に落葉するが、葉柄に産卵されている葉は翌年の発生源となる。したがって、落葉の除去も重要である。

北海道農政部生産振興局技術普及課 花・野菜技術センター駐在 主任普及指導員

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iPlant|ISSN 2758-5212 (online)