イチジク出荷後の果実腐敗は酵母菌による発酵が原因

愛知県経済農業協同組合連合会
三宅 律幸

はじめに

露地イチジクは、ほ場や出荷後に腐敗果が発生することが多く、生産者・消費者の双方にとって悩みのタネとなっている。愛知県のイチジク(品種:桝井ドーフィン)栽培地を調査した結果(1)から、腐敗果の原因が、カビによる疫病(病原菌:Phytophthora palmivora)、酵母腐敗病(病原菌:Candida sorbosa, Candida sp., Pichia kluyveri)、黒かび病(病原菌:Rhizopus stolonifer var. stolonifer)などによることが分かった。とくに、成熟果実の出荷後に果実腐敗する主な原因は、ショウジョウバエ類によって運ばれた酵母菌が感染し、発酵して起こる酵母腐敗病である。

症状

酵母腐敗病は、8 月下旬〜収穫終了時(とくに9 月)、成熟果実に発生し、発酵腐敗させる。収穫期に降雨が多く、過熟果を放置した場合に発生する。出荷前に発病を見落とすと、出荷後に発酵腐敗が進行し、市場や小売店などで間題となる。
成熟した果実開口部の小花や花托(かたく)(小花:果実内側に密生しているピンク色の可食部の花、花托:小花がつく土台の部分で、肥大した白色の可食部)に発生し、腐敗する。はじめ開口部周辺の果皮が軟化し、ピンク色の果肉がアメ色に変化する(図1A)。腐敗初期の果実を切断すると可食部は水浸状に発酵腐敗している(図1B)。この症状は黒かび病に似ているが、症状の進行は黒かび病より緩やかである。黒かび病では発病 1~2 日後には果皮に菌糸(カビの糸状の構造物)が生じるが、本病では菌糸や胞子をつくらず、発病初期から発酵臭を伴う。発病部から果汁が漏出し(図1C)、果実内が発酵腐敗により空洞化し(図1D)、やがて表面に白い水泡が見られるようになり(図1E,F)、のちに乾いて固くなっていく(図1G)。

  • 図1. 酵母腐敗病の症状
    A. 初期病徴として見られる開口部付近のピンク色の変色
    B. 初期症状の果実でも内部の可食部が水浸状に発酵腐敗している
    C. 感染が進むと開口部から果汁が漏出する
    D. 果実内部が発酵腐敗により空洞化し、果皮に菌糸や胞子は形成されない
    E. 開口部から果汁とともに発酵腐敗による白色水泡が漏出する
    F. 果実が割れて発酵腐敗による白色水泡が溢れ出し、発酵臭が伴う
    G. 果汁の漏出後に乾固しミイラ化した果実。発酵腐敗が進行しても果皮には菌糸がみられないが、ショウジョウバエ類の蛹が多数みられる

伝染

原因菌として、3 種類の酵母菌がある(2)。キイロショウジョウバエ、オナジショウジョウバエ、オウトウショウジョウバエ、イチジクジクショウジョウバエによって媒介される(3,4)。ショウジョウバエ類は発病果や成熟果の臭いに誘われて飛来し(誘引され)、開口部内に産卵し、酵母菌を体につけて運ぶため、本病が広がってゆく(図2A)。発病果は伝染源として重要で、酵母菌の増殖に伴い発生するアルコール発酵臭がショウジョウバエ類を誘引し保菌させるとともに、産卵された卵から発生する虫も保菌者となる(図2B, 2C)。降雨があると雨滴が開口部に入り菌濃度が高まるため発病果が急増する。また、樹勢が強い樹では、果頂部が裂果しやすく媒介昆虫が誘引されやすい。

  • 図2. 酵母腐敗病の伝染
    A. 開口部に多数飛来したショウジョウバエ類
    B. 開口部に産卵されたショウジョウバエ類の白色卵(黒矢頭)と半透明の孵化幼虫(黄矢頭)
    C. オナジショウジョウバエ雌成虫

防除法

収穫を適期に行って、伝染源を取り除くこと(過熟果を樹上に残さない、発病果は園外に持ち出し土中深くに埋めるなど)が重要である。また、成熟1週間前にネット袋による果実の被覆(3,5)や開口部のテープ被覆(6)を行うと、ショウジョウバエ類の侵入が遮断でき、果実腐敗の発生をほぼ完全に防止できる。本病が発生し園内にショウジョウバエ類が見られる場合は、登録のある殺虫剤(アクリナトリン水和剤、クロルフェナピル水和剤、スピネトラム水和剤)の散布が有効である。

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iPlant|ISSN 2758-5212 (online)