メカニズムから考える!失敗しない土壌還元消毒のコツとは

千葉県農林総合研究センター
久保 周子

はじめに

土壌還元消毒という土壌消毒法をご存知だろうか。土壌還元消毒について聞いたことがある、興味はあるけど失敗するのが心配で導入に踏み切れない、といった声を聞く。ここでは、土壌還元消毒のメカニズムから考える、失敗しない消毒のコツを紹介する。

土壌還元消毒法とは

土壌還元消毒法は、ふすまや米ぬかといった有機物を土壌に混和し、水を大量に投入後、30℃以上の地温を約3週間維持する、主に施設を対象とした物理的な土壌消毒法である(1,2)。この処理により、土壌では、酸素を必要とする(好気性)微生物が有機物をエサとして急激に増殖する。そもそも、水を大量に投入した土壌は酸素が少ないことから、増殖した微生物が酸素を消費し、酸欠状態となる。これがいわゆる還元状態である(3)。植物病を引き起こす病原菌の多くは酸素を必要とするため、還元状態では生きることができない。加えて、還元状態では酸素を必要としない(嫌気性)微生物の様々な働きによって、病原菌は死滅する(4,5,6,7)。これが消毒のメカニズムである。

土壌還元消毒法の手順とコツ

土壌還元消毒法は、次のとおり行う(図1)。①10aあたり1トンのふすまや米ぬかを土壌に混和する。②灌水チューブを設置し、透明フィルムで土壌全体を覆う。③田んぼのような状態になるまで水を投入する。④ハウスを密閉し、地温の上昇を促す。頭上灌水を行った後に透明フィルムで被覆する場合は、②と③が入れ替わるが、これら一連の作業を切れ間なく、一挙に行うのが基本手順であり、消毒が成功するカギとなる。
なぜ、これら作業を一挙に行う必要があるのだろうか。
ふすまや米ぬかは病原菌にとってもエサとなる。混和したのち、しばらく放置すると、酸素が豊富で適度な地温の土壌中では、その間に病原菌が増殖する恐れがある。このため、灌水チューブを設置し、直ちに水を投入する。これにより、酸素の量は大幅に減らすことができる。また、圃場には底がないためしばらく放置すると水は時間とともに流亡し、再び酸素が供給されることになる。そこで、水を投入後、すみやかにハウスを密閉し、地温が30℃以上になるよう促すと、微生物が活発に活動し、効率よく還元状態へと移行するのである。
これらをふまえると、失敗しないためには、天気予報を十分に確認し、好天が続くタイミングで行うと良いであろう。また、日没時よりも、早朝、日が昇るのに合わせて水を止めるのも、ちょっとしたコツである。一連の作業を完了後、水が抜けることを心配するあまり、途中で水を追加してしまった、という話を聞くが、地温が下がるため、決して行ってはいけない。

  • 図1. 土壌還元消毒法の基本手順
    A. ふすま又は米ぬかを均一に散布する
    B. トラクターで耕耘し、ふすまを土壌に均一に混和する
    C. 灌水チューブを設置する
    D. 透明フィルムで被覆し、十分量灌水する

土壌還元消毒法の限界を知る

土壌還元消毒法では、有機物が混和された深さ25 cm程度までは消毒できるが、深層部の消毒はできない。この点は、土壌くん蒸剤を用いた場合と同じである。一方で、基本の2倍量の有機物を深耕ロータリーで混和すると深層部の消毒が可能となる。また現在は、低濃度エタノールのような液体を土壌の深層部まで浸透させることで、深層部の消毒が可能になる技術が開発されている(8,9)。低濃度エタノールによる土壌還元消毒は、資材費が77,000~154,000円(資材単価をメーカー小売希望価格 200 円/Lとして、標準使用量(0.5~1%)、液量50L/㎡で算出)と土壌くん蒸剤に比べて高価であるが(9)、青枯病などの激発圃場で深層部まで消毒したい場合などにも選択肢が広がる点では、土壌くん蒸剤よりも優れている。
ただし、土壌還元消毒法は30℃以上の地温を3週間確保することが条件のため、土壌消毒剤のように1年中行うことはできない。土壌還元消毒に適した時期は、地域によっても異なり、例えば千葉県では、6~9月を消毒可能な期間とする(10)。消毒期間が3週間と、土壌くん蒸剤に比べて長い点も、デメリットである。一方で、太陽熱消毒に比べて効果が安定し、消毒可能な期間は長くなる。さらに好天が続く夏季であれば、40℃以上の地温が確保され、消毒期間を短くできる。
高い消毒効果(図2)に加え、土壌くん蒸剤に比べて作業者の安全性も担保されるという点でも評価は高い。期待通りの効果が得られないと、とかく「失敗した」と思いがちであるが、土壌還元消毒法の適用条件を十分に理解した上で、適用可能な場面で選択することが必要である。

  • 図2. 土壌還元消毒効果の一事例(メロン)
    A. ネコブセンチュウの被害が激発した圃場
    B. 土壌消毒還元後(写真Aの翌年)の圃場
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iPlant|ISSN 2758-5212 (online)